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新規出願時から始まるSSIP式コスト削減方法

 特許の権利化コストを検討する場合、出願時の初期費用だけでなく、特許査定を得るまでに必要なトータルコストで考える必要があります。通常、一発特許は比較的稀で、特許査定に至るまでには、何度か拒絶理由通知を受けるケースが多いのが現状です。トータルコストを削減するためには、必要な権利範囲を確保しつつ、拒絶理由の通知回数を少なく抑えることがポイントになります。
 SSIPでは、このような要求に対して、基本的に以下の考えに基づいてクレームを作成しています(細かいテクニックは多々ありますが、その根底にある考えと思ってください)。

(1)メインクレームは先行文献に対する課題を解決する必要十分な構成要件のみで構築する。

(2)従属クレームは、進歩性に貢献し得る内容を厳選する(逆に進歩性に貢献しない内容は実施例レベルの記載に留めて出願コストを削減する)。

 いずれもシンプルなものですが、これを徹底するためには発明の内容を技術的に深く理解する必要があります。このように新規出願時からクレーム内容を吟味しておくことで、初回拒絶理由の通知時に、発明の内容について十分な審査結果が得られますので、特許査定までの費用・期間が大きく削減できます。

※ちなみに、「国内中間処理にみるSSIP式コスト削減方法」は、こちらから↓
http://jpatwatanabe.blog.fc2.com/blog-entry-114.html

まとめ審査のススメ

 平成25年4月から、特定の事業戦略に関連する一群の出願をまとめて審査する、いわゆる「まとめ審査」がスタートしています。ご存知の方も多いと思いますが、まとめ審査のメリットとしては、以下のような点が挙げられます。
・技術分野や特許・意匠・商標に関わらず、事業戦略に一定の関連がある出願をまとめて審査できる。
・権利化のタイミングをある程度選択できる。
・特定の審査官チームが審査を担当するので、ばらつきが少なく、質のよい審査を受けられる。
・申請に追加手数料がかからない。

 そして10月1日に発表された特許庁リリースによれば、次の点において、まとめ審査の利便性向上が図られました。
(変更点1)出願人が異なる複数の出願を、まとめ審査対象として申請できるようになりました。
→従来、出願人が同一であることが要件になっていましたが、グループ会社・関連企業・大学との共同研究開発についても幅広く対応できるようになりました。例えばA出願はa社&b社の共同出願、B出願はb社の単願、C出願はa社の単願のような場合であっても申請可となりました。
(変更点2)審査に着手済みの案件も申請可能になりました。
→ただし、依然として「原則として着手前」との記載がガイドラインに残っているので、どの程度、審査が進んでいる案件まで申請できるのかは運用結果を見てみるしかありません。
(変更点3)申請内容の変更(出願の追加・差し替え)が可能な時期が拡張されました。
→「事業戦略対応まとめ審査」の申請書提出後でも、スケジュールの調整が行われるまで可能になりました。

 まとめ審査では、出願後に審査官に対する「事業説明」を面接で行うことが必須です。これは出願人側にとって負担にはなりますが、担当審査官に対して発明の重要性や事業内容を直接的に説明できます。統計的なデータはありませんが、結果的にまとめ審査では特許査定率が向上することは間違いなさそうです。まとめ審査を申請して、対象案件として採用される確率や、対象案件への権利化までの拒絶理由通知回数や、特許査定率については、今後、どのような統計データが公表されるのか興味深いです。

※まとめ審査の詳細については、下記リンクを参照ください。
<事業戦略対応まとめ審査について>
https://www.jpo.go.jp/torikumi/t_torikumi/matome_sinsa.htm
<事業戦略対応まとめ審査ガイドライン>
https://www.jpo.go.jp/torikumi/t_torikumi/pdf/matome_sinsa/matome.pdf

南米地域における知的財産保護の概要

 南米地域においても各国の法制度が未発達な場合が多いことから、多国間に亘る共同制度が設立されています。現在、コロンビア、ペルー、ボリビア、エクアドルはアンデス共同体(Comunidad Andina)に加盟しており、共通知的財産権法を有しています。一方で、アンデス共同体は、アフリカの多国籍機関(ARIPOやOAPI)のように国内官庁としての機能は有しておらず、あくまで共通の法制度を提供するにとどまります。従って、権利取得手続きは各国の特許庁に対して行うこととなります。また翻訳文は、スペイン語が要求されます。
 一方、ブラジルのように独自の法制度を有している国もあります。ブラジルに関しては、本ブログでも別カテゴリにまとめてありますので、そちらを参照ください。

アフリカへの特許出願(概要編)

 アフリカでは国内法での知財保護が困難な国が多いため、ARIPOやOAPIのような多国籍政府機関が発達しています。これらに加盟している国では、自国での国内法令を設けることを放棄し、且つ、特許庁を有さないことに代えて、これらの機関が国内官庁の役割を果たすと共に共通の法令を提供しています。

(1)アフリカ広域知的財産機関:ARIPO(African Regional Intellectual Property Organization)
 ARIPOは英語圏を中心とした加盟国から構成される多国籍機関です。ターゲットとする国がARIPOの加盟国であれば、その国に直接手続きを直接行うのではなく、ARIPOに対して行う必要があります。
 以下、ARIPOの主な特徴をまとめました。
・英語圏16ヶ国が加盟(ボツワナ、ガンビア、ガーナ、ケニヤ、レソト、マラウイ、モザンビーク、ナミビア、シエラレオネ、ソマリア、スーダン、スワジランド、タンザニア、ウガンダ、ザンビア、ジンバブエ)
公用語は英語です。
本部はジンバブエのハラレです。
・ARIPOの加盟国は、全てパリ条約・PCTの締約国です。
※ただし、正加盟国でも、特許に関する「ハラレ議定書」と商標に関する「バンジュール議定書」のどれを締結しているかはバラバラなので確認が必要です。

(2)アフリカ知的財産機関:OAPI(Organisation Africaine de la Propriete Intellectuelle)
 OAPIはフランス語圏を中心とした加盟国から構成される多国籍機関です。ターゲットとする国がアフリカ知的財産機関(OAPI)の加盟国であれば、その国に手続きを直接行うのではなく、OAPIに対して行うこととなります。以下、OAPIの特徴について、簡潔にまとめました。
・バンギ協定により設立され、本部はカメルーンのバウンデにあります。
・加盟国はフランス語圏16ヶ国です(ベナン、ブルキナファソ、カメルーン、中央アフリカ、コンゴ共和国、コートジボワール、ガボン、ギニア、ギニアビサウ、赤道ギニア、マリ、モーリタニア、ニジェール、セネガル、チャド、トーゴ)。
・加盟国に共通の知的財産法・機関を提供します(各加盟国は独自の国内法令や特許庁を有していません)。
公用語はフランス語と英語です。
・特許権や商標権は、OAPI出願によって取得できます。OAPI出願は特定の国を指定することはできず、自動的に全加盟国が指定され、権利付与時には全加盟国で保護されます。 つまり、OAPIの加盟国で権利取得したい場合には、特定の加盟国だけに出願することはできず、OAPI出願する必要があります。
・OAPI出願で得た知的財産権は、自動的に各加盟国で有効な権利になります。そして権利侵害については各加盟国の裁判所によって判断されます。
・OAPIの加盟国は、全てパリ条約・PCTの締約国です(ちなみに、著作権に関するベルヌ条約にも全加盟国が加入していますが、衣装に関するヘーグ協定は一部加盟国のみ加入しており、商標に関するマドリッドプロトコルについては加入国がありません)。

(3)その他
・エジプトや南アフリカでは、上記多国籍機関には属さず、独自の法制度・特許庁を有する国もあります。これらの国は、パリ条約・PCTを締結していますので、通常の外国出願と同様に、パリルート、PCTルートの利用が可能です。ただし、南アフリカでは翻訳文が英語なので問題ないですが、エジプトでは翻訳文がアラビア語であることに注意が必要です。

<まとめ>
・アフリカへの出願をする場合、まずはARIPOやOAPIの加盟国であるかどうかを確認する必要があります。加盟国である場合、その機関単位で出願を行う必要があります。
・基本的に多くの国でパリルート・PCTルートが利用可能です。
・翻訳文は基本的に英語で足りますが、独自の制度を有する一部の国でアラビア語のような特殊な言語が必要とされる場合があります。

※今回は概略のみですが、今後必要に応じて情報収集を行い、公開していきたいと思います。

2014年上半期における中国の国際出願状況

中国特許庁(SIPO)の発表によりますと、中国におけるPCT国際出願数が急増中です。2014年上半期(1-6月)の出願数は、1年前に比べて+20.5%の伸び率となっており、非常に顕著な増加を示しています。

国際出願の9割強は中国国内の企業・個人によるものであり、特に情報技術分野の大企業の伸びが目立っています。また地域別に見ると、国際出願の半数以上は南部の広東省から出願されています。

ちなみに、外国からのPCT国際出願は、依然として米国・日本が上位を占めているとのことです。

詳細な記事はこちらから、どうぞ↓
http://english.sipo.gov.cn/news/official/201408/t20140819_997512.html
プロフィール

渡邊裕樹

Author:渡邊裕樹
弁理士の渡邊裕樹です。特許・商標を中心に、国内外の知的財産業務に従事しています。権利化・調査・鑑定・審判・係争など、幅広く取り扱っています。

☆経歴☆
・山形県出身
・東京工業大学大学院理工学研究科物性物理学専攻修了(理学修士)
・計測機器エンジニアを経て、2007年に弁理士試験合格(弁理士登録番号:15913)。その後、大手特許事務所を経て、権利化業務を中心に知的財産業務に従事中。

☆使用言語☆
日本語、英語、中国語

☆所属団体☆
・日本弁理士会(JPAA)
・アジア弁理士協会(APAA)

☆その他☆
・日本弁理士会関東支部 常設知的財産相談室 相談員
・知財総合支援窓口 派遣専門家
・東京都知的財産総合センター 登録相談員
・日本弁理士会 知財キャラバン事業 支援員
・ジュニア野菜ソムリエ

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