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クレーム記載の留意事項

インドに出願する際に、クレーム記載について留意すべき事項をまとめました。

・クレームの冒頭は必ず"We claim"のスタイルを取らなければなりません。
・マルチ従属クレームが認められています。
・複数の独立クレームも認められています。
・図面の参照番号の挿入は不要です。
・クレーム数が10を超えると追加料金が加算されます。

→クレーム数の制限はありますが、マルチ従属や複数独立クレームも認められる点は日本と同様です。従いまして、インドに関しては日本語の基本的なクレーム作成方法をしていれば十分対応可能と思われます。

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権利化後の手続き

インドの権利化後の手続きについて、まとめてみました。

1.存続期間
・存続期間は出願日から20年です(延長制度なし)。
・どの部署(地方)で特許を取得しても、インド全土で有効な権利として扱われます。

2.付与後の補正(57条)
特許権の付与後でも補正が可能です。この補正は、付与後であれば、いつでも可能です。客体的要件としては、新規事項の追加に該当せず、且つ、本質的な変更のない範囲(権利放棄、修正、説明の追加に限る)である必要があります。補正要件に反した場合、補正内容とその理由が公開され、利害関係人の異議申立対象となります。

2.付与後異議申立(25条(2))
・特許付与後12ヶ月以内に利害関係人が申立することができます。
・特許権者は申立申請の写しを受領した後、2ヶ月以内に応答し、その内容に応じて判断がなされます。
・異議は3人の審査官から構成される異議部で審理が行われた後、最終的に管理官によって判断がなされます。

3.特許権の取り消し
付与後異議申立の期間が過ぎた後でも、特許権が取り消される場合があります。
(1)利害関係人又は政府の申立によって、知的財産権審判委員会が取り消すことができ、また、侵害訴訟の反訴に基づいて高等裁判所が取り消せます(64条)。特に後者は、侵害訴訟であるにも関わらず、別途、無効審判等を経ることなく、高等裁判所自身が特許を取り消すことができるのが特徴的と言えます。

(2)特許権が原子力関係である場合には、政府の要請に応じて取り消せます(65条)。不特許事由といい、インドでは原子力関係について厳しい制度となっています。

(3)特許権が国家にとって公序良俗に反するとき、政府が取り消せます(66条)。

4.実施義務について
インドでは他国に比べて実施義務が厳格です。実施義務を果たさないからといって特許取り消しになることはありませんが、いくつかのペナルティーがあります。そのため、実施義務には真摯に取り組む意識が必要だと言えます。

実施義務について最も特徴的な制度は、実施に関する情報提供制度(146条)です。この情報提供があった場合、管理官から要求があった場合は要求から2ヶ月以内、要求がない場合には毎年3月末までに応答しなければなりません。応答時に拒否、虚偽等をすると刑事問題になっていまいます。実施していない場合であっても、その旨を正直に報告する必要があります。


拒絶理由への応答

インドで拒絶理由応答時に留意すべき事項について記載します。

☆OA応答についての留意事項
インドでは、審査請求から約6ヶ月以内に最初の拒絶理由通知が発行されることになっています(13条)。そして、出願人は初めの拒絶理由通知から12月以内(延長不可)に許可される状態にしなければなりません(21条)

OAの応答期間は1200ルピー/月で延長が可能ですが、このように1年のリミットがありますので、安易な延長は禁物です。繰り返しOAが発行されてもよいように、なるべく迅速に応答することが望ましいですが、実際には、急いで応答しても2回のOA応答で1年リミットとなってしまうようです。
ちなみに、インドでは拒絶理由通知に「最初」「最後」の区別はなく、発行回数にも制限がありません。また、補正は権利付与前であれば、新規事項の追加にならない範囲で、いつでも可能です(57条)。

※インド特許庁は地域別に4つの部署から構成されています。従来、各部署によって審査クオリティにばらつきがあるため、異なる部署に同じ内容の出願を行うという特許戦略が取られていたことがありました。しかしながら、最近は部署間で先行技術調査を共有することによって審査格差の是正がなされているため、現在では有効な戦略とは言えませんようです。

☆拒絶査定に対する不服
最終的な拒絶査定に対する不服申立は次の2パターンが可能です。
(1)Review Petition(77(1)F)
1ヶ月以内に請求する必要があります。

(2)Appeal(117A)
3ヶ月以内に請求する必要があります。

インド版IDS

インドにも米国IDSと類似の情報提供制度(8条)があります。
1.概要
(1)インド出願時にすでに関連外国出願をしている場合には、出願時にそのステータス情報を報告しなければなりません。
(2)インド出願後に関連外国出願をした場合には、インド出願後6月以内にそのステータス情報を報告しなければなりません。
(3)管理官から要求があった場合には、関連情報を提出しなければなりません。
(4)これらのステータス情報・関連情報の提供義務は、許可されるまで存在します。

2.情報提供を怠った場合
異議申立・特許取消の理由となりますので、十分に注意する必要があります。例えば、関連外国出願のOAやサーチレポートは確実に提出する必要があります。

インド在住の出願人が外国出願するときの留意点

 インドでは防衛・原子力に関する技術の国外流出を防止するために、インド国内の発明を外国に出願する場合に、制限を設けていますので注意が必要です。これは出願人が外国籍であっても例外ではありません。具体的には、次の要件を満たす必要があります(39条)。
(1)インドに第1国出願を行う必要があります。
(2)次のいずれかに該当すること。
インド出願日から6週間が経過していること。
特許局に申請を行い許可を得たこと

※外国企業であってもR&Dをインドで行い、それを海外出願する場合には十分注意する必要があります。
プロフィール

渡邊裕樹

Author:渡邊裕樹
弁理士の渡邊裕樹です。特許・商標を中心に、国内外の知的財産業務に従事しています。権利化・調査・鑑定・審判・係争など、幅広く取り扱っています。

☆経歴☆
・山形県出身
・東京工業大学大学院理工学研究科物性物理学専攻修了(理学修士)
・計測機器エンジニアを経て、2007年に弁理士試験合格(弁理士登録番号:15913)。その後、大手特許事務所を経て、権利化業務を中心に知的財産業務に従事中。

☆使用言語☆
日本語、英語、中国語

☆所属団体☆
・日本弁理士会(JPAA)
・アジア弁理士協会(APAA)

☆その他☆
・日本弁理士会関東支部 常設知的財産相談室 相談員
・知財総合支援窓口 派遣専門家
・東京都知的財産総合センター 登録相談員
・日本弁理士会 知財キャラバン事業 支援員
・ジュニア野菜ソムリエ

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