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まとめ審査のススメ

 平成25年4月から、特定の事業戦略に関連する一群の出願をまとめて審査する、いわゆる「まとめ審査」がスタートしています。ご存知の方も多いと思いますが、まとめ審査のメリットとしては、以下のような点が挙げられます。
・技術分野や特許・意匠・商標に関わらず、事業戦略に一定の関連がある出願をまとめて審査できる。
・権利化のタイミングをある程度選択できる。
・特定の審査官チームが審査を担当するので、ばらつきが少なく、質のよい審査を受けられる。
・申請に追加手数料がかからない。

 そして10月1日に発表された特許庁リリースによれば、次の点において、まとめ審査の利便性向上が図られました。
(変更点1)出願人が異なる複数の出願を、まとめ審査対象として申請できるようになりました。
→従来、出願人が同一であることが要件になっていましたが、グループ会社・関連企業・大学との共同研究開発についても幅広く対応できるようになりました。例えばA出願はa社&b社の共同出願、B出願はb社の単願、C出願はa社の単願のような場合であっても申請可となりました。
(変更点2)審査に着手済みの案件も申請可能になりました。
→ただし、依然として「原則として着手前」との記載がガイドラインに残っているので、どの程度、審査が進んでいる案件まで申請できるのかは運用結果を見てみるしかありません。
(変更点3)申請内容の変更(出願の追加・差し替え)が可能な時期が拡張されました。
→「事業戦略対応まとめ審査」の申請書提出後でも、スケジュールの調整が行われるまで可能になりました。

 まとめ審査では、出願後に審査官に対する「事業説明」を面接で行うことが必須です。これは出願人側にとって負担にはなりますが、担当審査官に対して発明の重要性や事業内容を直接的に説明できます。統計的なデータはありませんが、結果的にまとめ審査では特許査定率が向上することは間違いなさそうです。まとめ審査を申請して、対象案件として採用される確率や、対象案件への権利化までの拒絶理由通知回数や、特許査定率については、今後、どのような統計データが公表されるのか興味深いです。

※まとめ審査の詳細については、下記リンクを参照ください。
<事業戦略対応まとめ審査について>
https://www.jpo.go.jp/torikumi/t_torikumi/matome_sinsa.htm
<事業戦略対応まとめ審査ガイドライン>
https://www.jpo.go.jp/torikumi/t_torikumi/pdf/matome_sinsa/matome.pdf
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審査過程に関連する特許用語対訳リスト

日本でのprosecution(出願から登録に至るまでの一連のプロセス)に関連する主な特許用語の日英対訳リストです。外内出願の現地代理人との通信文の作成等にお役立てください。

補正 amendment
却下 dismissal
取下 withdrawal
出願公開 publication of unexamined application
審査請求 request for examination
方式審査 formality check
補正命令 invitation to amend
審査 examination
拒絶理由通知 Notification of Reason for Refusal, Notice of Reason of Rejection
拒絶査定 Decision of Refusal
特許を付与すべき旨の決定(特許査定) Decision to Grant a Patent
前置審査 Reexamination Before Appeal
無効審判請求 request for invaidation
特許掲載公報の発行 publication of patent
審理(無効審判) Trial Examination
拒絶査定不服審判 Appeal Against Examinar's Eecision of Refusal
特許審決 appeal decision for registration
拒絶審決 appeal decision of refusal
審決(無効理由なし) trial decision to maintain
審決(無効審決) trial decision to revoke
東京高等裁判所 Tokyo high court
最高裁判所 The supreme court
登録 registration
付与後特許異議申立制度 post-grant opposition system
無効審判制度 invalidation trial system
裁判所への提訴 Appeal to courts
知的財産高等裁判所 Intellectual Property High Court

ソフトウェア関連発明にありがちな拒絶理由(2)

 ソフトウェア関連発明で陥り易い拒絶理由として、実施可能要件(36条4項1号)違反があります。
 ソフトウェア関連発明は、コンピュータなどの演算装置で実施されるため、実態的な構成が表現しにくい性質があります。そのため、実施可能要件違反が比較的通知されやすい分野です。しかし、実施可能要件がどの程度の明細書開示を要求しているのかを意識すれば問題ありません。
 一つの目安としては、ソフトウェアがコンピュータのプロセッサやメモリをどのように動作させることで実行されるのかが明確になる程度に開示すれば十分です。具体的に言いますと、課題を解決するために、どのようなデータ入力がなされ、どのように処理され、その結果がどのように出力されるのかという一連の流れを、機能的に複数の段階に分割してそれぞれの機能をブロック化してブロック図に表わすと共に、それぞれの機能処理をステップとしたフローチャートが必要になります。その際、処理の内容がブラックボックスになってはいけません。一方、例えばソフトウェアを実行するためのコンピュータ自体の構成が公知であれば、その構成までを明細書に逐一記載することは不要です。

 このようなソフトウェア関連発明の実施可能要件については、審査基準の第VII部第1章1.2.1(http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/shiryou/kijun/kijun2/tukujitu_kijun.htm)に、詳細な記載があります。

ソフトウェア関連発明にありがちな拒絶理由(その1)

次のようなソフトウェア関連発明の方法クレームについて、拒絶理由を考えてみます。

例)コンピュータを用いて
Aする工程と、
Bする工程と、
Cする工程と
を備えることを特徴とする方法。

この例では、冒頭に「コンピュータを用いて」との文言がありますが、各工程の動作主体が「コンピュータ」或いは「人間」なのか、両方の解釈の余地が残っています。そのため、このクレームは不明確であるとして拒絶されます。

 このような拒絶理由を回避するためには、各工程の動作主体が人間ではないことを明確にすることが有効です。例えば、コンピュータの構成要件としてA手段、B手段、C手段・・・と記載しておき、それらが主体となって各工程を実施することを明確に表現します。
 具体的には、次のようなクレームは明確といえます。

例)A手段、B手段及びC手段を備えるコンピュータを用いて、
前記A手段が・・・する工程と、
前記B手段が・・・する工程と、
前記C手段が・・・する工程と
を備えることを特徴とする方法。

ソフトウェアの保護形態

このブログでは特許を中心に記載していますが、ある製品を権利化しようとする場合には、特許以外の保護対象についても可能性を検討する必要がある場合があります。ソフトウェアは、その典型と言えます。ソフトウェアの何を保護するのかに応じて、どの法律による保護を選択すればよいか、基本的な考え方を紹介したいと思います。

(1)特許法
ソフトウェアの技術側面を保護する場合に適しています。特許法の保護対象である発明が技術的思想であることからも、容易に理解できると思います。ちなみに、実用新案では構造等が保護対象なので、ソフトウェアは保護できません。

(2)意匠法
 ソフトウェア自体は実態的構造を有さないため、基本的に意匠法の保護対象にはなりませんが、一部の画面デザインについては、平成18年改正によって保護対象に含まれることになりました。但し、保護対象となる画面デザインの範囲は狭いので注意が必要です(意匠法2条2項)

(3)著作権法
ソフトウェアの創作的表現を保護するときに適しています。あくまで「表現」についての保護ですので、特許法のような技術的思想については保護されません。
 例えばある機能を実現するために様々なコーディングが考えられますが、具体的なコーディング表現は著作権の保護対象となる一方で、フローチャートレベルに表わせるような技術的内容に関しては特許法で保護を求めることになります。

(4)不正競争防止法
上記態様に該当しないものであっても、デッドコピーについては一定の保護規定があります。
プロフィール

渡邊裕樹

Author:渡邊裕樹
弁理士の渡邊裕樹です。特許・商標を中心に、国内外の知的財産業務に従事しています。権利化・調査・鑑定・審判・係争など、幅広く取り扱っています。

☆経歴☆
・山形県出身
・東京工業大学大学院理工学研究科物性物理学専攻修了(理学修士)
・計測機器エンジニアを経て、2007年に弁理士試験合格(弁理士登録番号:15913)。その後、大手特許事務所を経て、権利化業務を中心に知的財産業務に従事中。

☆使用言語☆
日本語、英語、中国語

☆所属団体☆
・日本弁理士会(JPAA)
・アジア弁理士協会(APAA)

☆その他☆
・日本弁理士会関東支部 常設知的財産相談室 相談員
・知財総合支援窓口 派遣専門家
・東京都知的財産総合センター 登録相談員
・日本弁理士会 知財キャラバン事業 支援員
・ジュニア野菜ソムリエ

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