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EPO Social Report 2013

EPOの最新(2013年)の年次レポートが開示されています。審査官数の推移など統計的なデータが中心ですが、目を通す価値があると思いますので紹介します。興味があるポイントは人それぞれだと思いますが、個人的に着目したポイントを例示しておきます。

・EPOの審査官数について。
前年比+3%で増加傾向にあるようです(Table.2)。

・勤務地と国籍の関係
EPOスタッフは、勤務地と異なる国籍を持っている人が大半です。国籍別では、ドイツ系とフランス系がダントツで多く、ついでオランダ系、イタリア系、スペイン系などが並んでいます(Table.4)。

・EPO審査官の平均給与(Table.18)
手当も含めて、詳細に開示されています。

・審査官の勤務実態(P.42-)。
就業時間や休暇数などが開示されています。残業時間は減少傾向にあり、労働環境改善が進んでいるようです(Table.35)
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European Inventor Award 2014 (結果追記あり)

実務と関係ないかもしれませんが、本日は European Inventor Awardのセレモニーが行われるそうです。
部門は"industry","small and medium-sized enterprises","Research","Non-european cuntries","Lifetime achievement"に分かれており、ノミネートされたファイナリストのプロフィール・インタビューが詳細に掲載されています。
そして,"Non-european cuntries"には、なんと日本人が掲載されています。
Masahiro Hara氏を筆頭とするデンソーウェーブのQRコード開発チームです。
日本人のノミネートは2009年以来であり、前回は受賞を逃しましたが、果たして今年はどうでしょうか?
結果に注目です。

公式ページは、こちらのリンクからどうぞ。


※追記(日本時間23:30分)
結果発表されました!
Masahiro Hara氏らは、部門受賞は逃したものの、Popular Prizeを受賞!!
特許業界で、ちょっとした話題になりそうですね。
おめでとうございます。
http://www.epo.org/learning-events/european-inventor/popular-prize.html

欧州のソフトウェア関連発明事情

(1)プログラム自体は特許対象外
 まずEPC52条では、コンピュータプログラム自体は特許対象外とされています。その代わり、プログラム自体は著作権で保護可能とされており、プログラム制御される装置や方法が特許対象となっています。

(2)ソフトウェア関連発明の適確性判断
 審査ガイドラインによれば、特許対象となるソフトウェア関連発明について、クレームされた主題が明らかに技術的な性質を有さない場合には保護対象に該当しないとして拒絶するとされています。しかし、この判断は比較的ゆるく、例えばコンピュータや端末等のハードウェア要素がクレーム中に含まれていればクリアできます。

(3)ソフトウェア関連発明のInventive Step判断方法
 (2)で述べたように、欧州ではソフトウェア関連発明が保護対象として比較的認められやすいですが、一方で、進歩性判断が他国より厳しいといえます。
 欧州では、クレーム全体から技術的性質(technical character)を特定し、当該特定した要素のみを進歩性の評価対象とします。つまり、その他の要素は、進歩性の評価に考慮されません。そのため、技術的性質を有する部分について進歩性がないと判断されると、発明全体が拒絶されてしまいます。その結果、他国では特許できても、欧州では受けることができない場合があり得ます。

EP出願公開

EP出願は、出願日又は優先日から18ヶ月経過後に公開されます。公開態様が出願パターンに応じて何通りかあるので、まとめてみました。各パターンはEP公開番号の末尾に示されているA1、A2・・・のようなシンボルで識別可能ですので、これらの判別方法を覚えておくと、何かと便利です。

(1)PCT移行のEP出願の場合
国際調査報告書が添付されて公開されます(公開番号の末尾には「A1」が表示されます)
国際調査機関がEPO以外である場合には、SESRが公開されます(公開番号の末尾には「A4」が表示されます)。

(2)PCT移行ではないEP出願の場合(パリルート or 直接出願)
ESR付きの公開(公開番号の末尾に「A1」が表示されます)
ESRなしでの公開(公開番号の末尾に「A2」が表示されます)
ESRのみの公開(公開番号の末尾に「A3」が表示されます)

欧州出願 or 各国出願?

EPC(欧州特許条約)に基づくEP出願は、簡易に複数国で有効な特許を取得できるため便利な制度ですが、各国に直接出願する場合と比べたメリット・デメリットを考慮しておく必要があります。これは最初から欧州の特定国に直接出願する場合だけでなく、PCT出願からEP出願に移行する場合も同様です。
※ただし、フランス・イタリアなどのような国は、PCT出願から移行する場合には、直接各国に移行することを認めておらず、EP出願を経る必要があります。

1.EP出願
<メリット>
・簡単な手続きで多数国で特許を取得できます。
・すべて英語で手続きができます。
・言語の異なる複数国で特許取得する際に、権利取得までに必要な翻訳コストを節約できます(ただし、各国で有効化する際には、その国の言語への翻訳が必要になります)。
・各国の制度に関わらず、実体審査を経て権利化されるので、信頼性のある権利取得ができます(欧州には無審査主義の国もたくさんあります)。

<デメリット>
・審査が遅い。
・基礎となる欧州特許が無効化されると、各国で一気に特許が無効になってしまうことがある。


2.各国出願
<メリット>
・EP出願に比べて、審査が早い国が多いです。
※英国はインドと同様に最初のOAから1年以内に権利化しなければなりません。インドがイギリスの植民地だった名残でしょうか。。。
※欧州では国内法として特許にも無審査主義を採用している国が多いため、権利化が早い国がほとんどです。実体審査がある国でも1-2年で結果がでるところが多いようです。

<デメリット>
・各国に適した言語で手続きを行う必要がありますので、翻訳の初期コストが高くなります。
・無審査主義の国が多いので、登録された特許権の有効性に疑問が残ります(ちなみにドイツ・英国・オランダは実体審査ありです)。
・ドイツ以外では、異議申立制度もありません。
プロフィール

渡邊裕樹

Author:渡邊裕樹
弁理士の渡邊裕樹です。特許・商標を中心に、国内外の知的財産業務に従事しています。権利化・調査・鑑定・審判・係争など、幅広く取り扱っています。

☆経歴☆
・山形県出身
・東京工業大学大学院理工学研究科物性物理学専攻修了(理学修士)
・計測機器エンジニアを経て、2007年に弁理士試験合格(弁理士登録番号:15913)。その後、大手特許事務所を経て、権利化業務を中心に知的財産業務に従事中。

☆使用言語☆
日本語、英語、中国語

☆所属団体☆
・日本弁理士会(JPAA)
・アジア弁理士協会(APAA)

☆その他☆
・日本弁理士会関東支部 常設知的財産相談室 相談員
・知財総合支援窓口 派遣専門家
・東京都知的財産総合センター 登録相談員
・日本弁理士会 知財キャラバン事業 支援員
・ジュニア野菜ソムリエ

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