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2014年上半期における中国の国際出願状況

中国特許庁(SIPO)の発表によりますと、中国におけるPCT国際出願数が急増中です。2014年上半期(1-6月)の出願数は、1年前に比べて+20.5%の伸び率となっており、非常に顕著な増加を示しています。

国際出願の9割強は中国国内の企業・個人によるものであり、特に情報技術分野の大企業の伸びが目立っています。また地域別に見ると、国際出願の半数以上は南部の広東省から出願されています。

ちなみに、外国からのPCT国際出願は、依然として米国・日本が上位を占めているとのことです。

詳細な記事はこちらから、どうぞ↓
http://english.sipo.gov.cn/news/official/201408/t20140819_997512.html
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専利法と周辺規定

中国特許実務に携わる際に、関連のある法制度をまとめました。

1.専利法
日本の特許法に該当するものですが、特許だけでなく実用新型(実用新案)や外観設計(意匠)も一緒に規定されています。ただし、日本の特許法条文に対応する一部(例えば職務発明、特許料金、審判、裁定など)は専利法には記載されておらず、次の実施細則に記載されています。

2.実施細則
日本の実施細則に相当するものですが、上述したように日本では特許法に規定されるような条文(例えば、職務発明、特許料金、審判、裁定など)が規定されていますので、注意が必要です。

3.審査指南
日本の審査基準に相当するものです。

※ちなみに1-3は特許庁HPに原文と日本語訳のリンクがありますので、簡単に参照が可能です。
http://www.jpo.go.jp/torikumi/kokusai/kokusai3/china_patent_law.htm

4.司法解釈
中国では判例は当事者のみを拘束することとされており、ある事件において他の事件の判決を参考にすることは意味が少ないという特徴があります。つまり、中国では判例主義を採用していません。その代わり、裁判所が数年に一度発行する司法解釈が重要になります。司法解釈は、過去の判例をもとに、裁判所の統一見解を示すものであり、実務上、非常に重要です。

【中国】補正制限のまとめ

中国といえば「補正が厳しい」と言うくらい有名なトピックですが、関連事項を含めて整理してみました。

1.自発補正
(a)時期的制限(細則第51条第2項)
・実体審査請求時
・実体審査への移行通知書の受領日から3ヵ月以内
※実用新型特許出願及び外観設計特許出願は出願日から2ヵ月以内(実体審査がないため)。
(b)補正可能な範囲
★専利法第33条★
出願人は、その特許出願書類について補正することができる。ただし、発明及び実用新型の特許出願書類の補正は、原明細書及び特許請求の範囲に記載された範囲を越えてはならない。

 ここで「記載された範囲」とは、当初明細書および請求項の文字どおりに記載された内容と、当初明細書および請求項の文字どおり記載された内容と明細書に添付された図面から直接的に、疑う余地も無く確定できる内容を含む(審査指南第2部分第8章5.2.1.1)。
 尚、実務上は文字どおりの範囲内でしか補正が認められないことが多い。

2.受動補正
(1)拒絶理由応答時の補正
(a)時期的制限(専利法第37条)
・審査意見通知書の応答期間内(1回目は4ヶ月、2回目以降は2ヶ月が通常。1回に限り最大2ヶ月延長可)
(b)補正可能な範囲
受動補正の場合、自発補正時の制限に加えて、審査官の審査意見通知書の要求に従う範囲内で補正しなければならない(細則第51条第3項)。
ただし、審査官の要求に従う補正に該当しない場合でも、当初明細書範囲内の補正であり、明細書及び請求項の欠陥を解消するものであり、かつ、特許付与の見通しがある場合は、当該補正が認められる。

※受動補正時に行う補正として認められない類型 (審査指南第2部分第8章5.2.1.3)
(i)独立請求項の中の技術的特徴を自発的に削除することで、当該請求項が保護を請求する範囲を拡大した場合。
(ii)独立請求項の中の技術的特徴を自発的に変更することで、保護の請求範囲の拡大をもたらした場合。
(iii)明細書のみに記載され、元の保護請求の主題との単一性を具備しない技術的内容を自発的に補正後の請求項の主題とした場合。
(iv)新しい独立請求項を自発的に追加し、当該独立請求項で限定した技術方案が元の請求項で示されていない場合。
(v)新しい従属請求項を自発的に追加し、当該従属請求項で限定した技術方案が元の請求項で示されていない場合。

(2)復審請求時の補正
(a)時期的制限(実施細則第61条)
・拒絶査定に対する復審請求を復審委員会に請求する際
・復審委員会の審判通知書に応答する際
・口頭審理に参加する際(審査指南第4部分第4章4.2)。
(b)補正可能な範囲
 復審段階における補正は専利法第33条及び実施細則第61条1項に合致するものでなければならない。すなわち、新規事項の追加が禁止される他、専利法実施細則第61条1 項に基づき、補正は、拒絶決定または合議体に指摘された欠陥を解消するものに限られる。

3.誤訳訂正
PCT出願についてのみ誤訳訂正が認められている。
パリルートの場合は誤訳訂正は一切できない(審査指南第2部分8章5.2.1.1)。

(a)時期的制限(実施細則第113条(1)(2))
・国務院特許行政部門が発明特許出願または実用新型特許権の公開の準備作業を完了する前。
・国務院特許行政部門が発行した発明特許出願が実体審査段階に入った旨の通知書を受領した日から3ヵ月以内。
・審査官が誤訳に気づき審査意見通知書を発行した場合は指定期間内。
(b)補正可能な範囲
原国際特許出願の明細書及び図面に記載した範囲内で認められる(細則第113条第1項)。

3.権利化後
 訂正審判に対応する制度は存在しないが、無効審判を請求された場合、請求項の削除・併合・技術手段の削除が認められる(審査指南第4部分第3章4.6.1)。
・請求項の削除及び技術手段の削除は、無効宣告請求の審査決定が下されるまで行うことができる。
・請求項の併合は、以下のアクションに対する答弁書提出期間内に限られる(審査指南第4 部分第3章4.6.3)
(i) 無効宣告請求書
(ii)請求人が追加した無効宣告事由または補充した証拠
(iii)復審委員会が引用した、請求人が言及していない無効宣告事由または証拠

【中国】記載要件の留意事項

中国で拒絶理由の対象となる記載要件をまとめてみました。基本的には日本と似ていますが、特に4番目の「必要な技術的特徴要件」は中国独自の記載要件なので注意が必要です。

(1) サポート要件
★専利法第26条第4項★
权利要求书应当以说明书为依据,清楚、简要地限定要求专利保护的范围。
(和訳)
権利要求書は説明書を根拠とし、特許保護請求の範囲について明確かつ簡潔に要求を説明する。

お馴染みのサポート要件ですが、中国では比較的厳しく適用されている感覚を受けます。これは、中国の発明特許の対象が、日本の発明対象と少々異なる定義で規定されていることに起因しているようです。以下は、中国の発明特許の対象を規定する条文です。

★専利法第2 条第2項★
发明,是指对产品、方法或者其改进所提出的新的技术方案。
(和訳)
発明とは、製品、方法又はその改善に対して行われる新たな技術方案を指す。

日本では、発明対象を「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの(特許法第2条第1項)」と規定していますが、中国では上記のように「技術方案」を対象としています。つまり日本では「思想」を保護するので抽象的なクレームでも、明細書にそれを具現化する一実施例を記載すれば記載要件を満たすと判断されやすい傾向にあります。一方、中国の「技術法案」は具体的な技術ソリューション、すなわちTechnical Solutionを保護対象としているので、明細書の記載もより具体性が求められ、サポート要件が厳しくなります。

(2) 明確性要件
これもおなじみの要件です。条文的には、サポート要件と同じ専利法第26条第4項に含まれていると解釈できます。基本的に不明確な用語・表現(例えば、「厚い」、「薄い」、「強い」、「弱い」、「高温」、「高圧」、「広い範囲」、「例えば」、「望ましい」、「特に」、「必要な際」等)を用いないように気を付けていれば、他国と同じ間隔で問題ありません。

(3) 実施可能要件
これも日本と同じなので、詳細は省略します。ちなみに、ベストモードは、中国では審査指南第2部分第2章2.2.6に最良の形態を記載すべきと記載されているため一応要求されているが、拒絶理由及び無効理由にはなっていません。
★専利法第26条第3項★
说明书应当对发明或者实用新型作出清楚、完整的说明,以所属技术领域的技术人员能够实现为准;必要的时候,应当有附图。摘要应当简要说明发明或者实用新型的技术要点。
(和訳)
説明書では、発明又は実用新案に対し、その所属技術分野の技術者が実現できることを基準とした明確かつ完全な説明を行い、必要時には図面を添付する。概要は発明又は実用新案の技術要点を簡単に説明する。

(4) 必要な技術的特徴要件
★専利法実施細則20条第2項★
独立請求項は全体的に発明または実用新案の技術的構想を反映し、技術課題を解決するのに必要な技術特徴を記載しなければならない。

 日本にはない記載要件なのでなじみが少ないが、拒絶理由通知でも、ときどき見かけることがある。簡単にいえば、独立クレームに技術課題を解決するために必要だと判断された構成要件が全て記載されていない場合には、この記載要件違反となる(出願人がどう思うのかではなくて、審査官が足りないと判断した場合には拒絶理由が通知される)。
 対応としては審査官の認定が間違っている場合には意見書で反論し、承服するのであれば必要な構成要件を追加する補正を行う。
 ちなみに本記載要件は独立請求項に対してのみ要求される。

審査手続きの留意事項

2009年10月以降に施行された第三次改正法に基づいて、審査手続きの留意事項をまとめました。大まかな流れは日本の特許制度と似ていますが、様々な注意点があります。ちなみに、次の点では日本と同じです。

(1)審査請求
 優先日から3年以内に請求する必要がある。具体的には、パリルートもPCTルートも優先日から3年以内(日本では、パリルートは、現実の日本出願日から3年以内であり、PCTルートでは国際出願日から3年以内。韓国では、現実の韓国出願日から5年以内)。
 ちなみに、出願公開時期は優先日から18ヶ月後。

(2)実体審査への移行通知
 初歩審査のあと審査官が実体審査に着手する際には、その旨の開始通知がなされる。当該通知の受領後3ヶ月間は自発補正が可能なラストチャンス(これを逃すとクレームの範囲を広げる補正は不能となる:細則第51条第2項)。

(3)自発補正
 自発補正は、(i)審査請求と同時、(ii)実体審査への移行通知から3ヶ月以内に可能である。中国では自発補正のチャンスを増やすためにも、出願と同時の審査請求は避けたい。

(4)審査意見通知(拒絶理由通知:専利法第37条)
・「最初」と「最後」の区別がなく、通知回数にも制限がない。
・拒絶理由毎に通知するため、審査意見通知の回数は他国に比べて多くなる傾向がある。
・審査意見通知への応答期間は、通常、1回目が4ヶ月、2回目以降は2ヶ月に設定される(期間満了前に申請によって1回に限り最大2ヶ月まで延長可能:審査指南第5部分第2章4.1)。
→渡過するとみなし取り下げになる。

(5)駁回決定(拒絶査定)
・審査官が特許の見込みがないと判断したとき、駁回決定(拒絶査定)がなされる(専利法第38条)。約3-4回の通知後、拒絶されることが多い。
・駁回決定に対しては、3ヶ月以内に復審委員会に復審請求が可能である(専利法第41条)。

(6)前置審査と復審
・復審請求時には補正が可能であるが、補正の有無にかかわらず、必ず前置審査が行われる(実施細則第63条)。
・前置審査で拒絶理由が解消しない場合には、合議体による審理(復審)が行われる。
・復審委員会の決定に不服がある場合には、3カ月以内に人民法院に対して提起することができる(専利法第41条第2項)。

(7)その他
・存続期間(専利法第42条)
発明特許権は出願日から20年。実用新型特許権及び外観設計特許権は出願日から10年。
・平均審査期間
発明特許・・・実体審査開始から22.9ヶ月
実用新型特許・・・出願から4.7ヶ月
外観設計特許・・・出願から2.6ヶ月
プロフィール

渡邊裕樹

Author:渡邊裕樹
弁理士の渡邊裕樹です。特許・商標を中心に、国内外の知的財産業務に従事しています。権利化・調査・鑑定・審判・係争など、幅広く取り扱っています。

☆経歴☆
・山形県出身
・東京工業大学大学院理工学研究科物性物理学専攻修了(理学修士)
・計測機器エンジニアを経て、2007年に弁理士試験合格(弁理士登録番号:15913)。その後、大手特許事務所を経て、権利化業務を中心に知的財産業務に従事中。

☆使用言語☆
日本語、英語、中国語

☆所属団体☆
・日本弁理士会(JPAA)
・アジア弁理士協会(APAA)

☆その他☆
・日本弁理士会関東支部 常設知的財産相談室 相談員
・知財総合支援窓口 派遣専門家
・東京都知的財産総合センター 登録相談員
・日本弁理士会 知財キャラバン事業 支援員
・ジュニア野菜ソムリエ

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